
ガンとお金
前回は、私がファイナンシャルプランナーを目指したきっかけでもある、母のガンについてお話しましたが、今回はガンとお金についてお話したいと思います。
ガンとお金と聞いて、まず思い浮かぶのは治療費ですよね。
ガンの主な治療方法は、手術、放射線療法、薬物療法(抗がん剤治療)の3種類ですが、厚生労働省の「医療給付実態調査(平成30年度)」によると、ガンで入院して治療を受けた場合の医療費の平均は72万7,120円なので、自己負担割合が3割の人だと、病院から請求される金額は約22万円ということになります。
この金額は、国の「高額療養費制度」を利用すれば、さらに少なくなります。
高額療養費制度とは、家計負担が重くならないよう、医療費が1か月で自己負担上限額を超えた場合にその超えた額を国が支給してくれる制度で、上限額は年齢や所得に応じて定められています。
例えば年収約370万円~770万円の人が、1カ月に72万7,120円の治療を受けた場合の上限額は84,701円なので、病院から22万円請求されたとしても、実際に負担する金額は84,701円で済むということになります。

(ご自身の自己負担上限額は厚生労働省のHPでご確認ください)
ちなみによく間違えられる制度に医療費控除がありますが、医療費控除は、1年間に支払った10万円以上の医療費を確定申告することで所得税や住民税が安くなる制度で、高額療養費制度とは全く別物です。
もちろん2つの制度は併用することができますので、どちらも申請を忘れないようにしてくださいね。
高額療養費制度の存在を知ると、保険適用となる医療費に関してはそこまで恐れる必要はないかもしれません。
ただこの制度は、先進医療の費用が対象外となります。
先進医療とはその名の通り、「保険診療の対象に至らない先進的な医療技術」のことで、例えば放射線治療の一種である重粒子線治療は、ガン細胞に狙いを定めて照射することができるので、周りの正常な臓器などへの影響を抑えることができ、身体への負担が少なくなる治療法のことです。
気になる平均費用は・・・約315万円(厚生労働省 「第61回先進医療会議資料」)。
健康保険や高額療養費制度も使えず、全額が自己負担となってしまいます。
かなり高額ですが、ガンの治療は本当に辛いと聞くので、自分や大切な人が先進医療を受ける可能性に備えておきたいですね。
そしてガンになった場合は治療費がかかるだけではなく、実は収入が減ることも考えられます。
東京都福祉保健局の調査によると、ガンと診断された後に退職した人の割合は約21%。
退職しなかったとしても、負担が少ない部署に異動したり、時短勤務になったりして、約57%の人が収入が減ったと答えています。
治療費がかかる上に、収入も減少してしまったら、家計はかなり心配です・・・。
そこで次回は、ガンから家計を守るための備えについてお伝えしたいと思います。
FPアナウンサー
小原佳代子